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医師の働き方改革における「2種類の面接指導」と労働安全衛生法に基づく「面接指導」に関する労働時間の通算ルールを整理する
医療機関向けコラム
2026年7月13日
医師の働き方改革が本格施行され、各医療機関において長時間労働を是正するための措置が進められています。その中でも実務担当者を悩ませているのが、医師に対する「面接指導」の制度です。
現在、病院に勤務する医師に対しては、①労働基準法、②医療法、③労働安全衛生法(こちらは医師以外も含みます)という3つの法律に基づく面接指導が混在しています。
本コラムでは、これら3つの面接指導の法的な位置づけを整理するとともに、判断を迷いやすい「副業・兼業先との労働時間の通算ルール」について、行政の通達やQ&Aを交えながらわかりやすく解説します。
まずは、それぞれの面接指導がどのような目的と法的根拠で設けられているのかを整理します。
1. 労働基準法に基づく面接指導
医師に対して、1か月100時間以上の時間外・休日労働を行わせるための「要件」として義務付けられています。
根拠:労働基準法第141条、労働基準法施行規則第69条の3など
2. 医療法に基づく面接指導
長時間働く医師の健康を確保し、必要に応じて就業上の措置を講じるための「健康確保措置」としての実施義務です。
根拠:医療法第108条第1項
3. 労働安全衛生法に基づく面接指導(医師以外の労働者と共通)
医師に限らず、全労働者の健康保持を目的とした面接指導です。
根拠:労働安全衛生法第66条の8
労基法と医療法の面接指導は、実質的にその実施要件は同一であるため、「同一の面接指導」として一度に実施することができます。
一方で、労働安全衛生法の面接指導は根拠法が異なるのみならず、実施要件自体も異なるため、厳密には別に実施することになります。
ただし、労基法・医療法の面接指導を実施した後、その結果を証明する書面が事業者に提出された場合、労働安全衛生法の面接指導も実施したものと取り扱うことは認められています(安衛法第66条の8第2項ただし書、安衛則附則第19条の2等)
複数の医療機関で働く医師への面接指導が必要かどうか(対象者となるか)を判断する際、最も注意すべきなのが「副業・兼業先との労働時間を通算するかどうか」です。これは適用される法律によって明確に異なります。
1. 医療法・労基法に基づく面接指導は「通算する」
医療法および労基法に基づく面接指導の要件である「1か月の時間外・休日労働が100時間以上となることが見込まれるか」を判断するにあたっては、副業・兼業先における時間外・休日労働時間もすべて「通算して」計算しなければなりません。
【参考:医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A】
https://www.mhlw.go.jp/content/001115350.pdf
問6-1 労基則の面接指導に係る労働時間の考え方については、労基法第38条第1項により、副業・兼業があった場合には労働時間を通算するとされており、(中略)該当するか否かを判断するに当たっては、副業・兼業先における労働時間も通算される。また、医療法の面接指導についても(中略)判断に当たっても、副業・兼業先における労働時間が通算される。
2. 労働安全衛生法に基づく面接指導(一般労働者対象)は「通算しない」
一方で、労働者全般を対象とした労働安全衛生法に基づく面接指導(いわゆる長時間労働者への面接指導)については、面接指導の対象となる要件(1週間当たり40時間を超えて労働させた時間が月80時間を超える等)に該当するかどうかの判断において、副業・兼業先の労働時間は通算しません。
【参考:医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A】
https://www.mhlw.go.jp/content/001115350.pdf
問6-1(後半) 一方、安衛則第52条の2第1項に要件を定める面接指導(長時間労働者への面接指導)の対象者に該当するかは、副業・兼業先の労働時間を通算せずに、自らの医療機関における労働時間の状況に基づき、1週間当たり40時間を超えて労働させた時間が1月当たり80時間を超えるか否かによって判断する。
自院での労働時間のみでこの基準を超えた場合に初めて、労働安全衛生法に基づく面接指導の対象となります。
上記のように、医師に対する面接指導は複数の法律が絡み合い、非常に複雑です。実務においては以下のポイントを整理し、院内の運用ルールを徹底することが重要です。
労働時間把握の徹底:
自院の労働時間だけでなく、自己申告等により副業・兼業先での労働時間を正確に把握する仕組みを構築すること。
月100時間超過の見極め:
すべての労働時間を「通算」して月100時間以上となる見込みの医師を抽出し、確実に労基法・医療法に基づく面接指導を実施すること。
ルールの違いを正しく理解し、法令を遵守する労務管理体制を構築していきましょう。
弊法人では、医療機関への支援実績が豊富な社会保険労務士が、病院のルール作りをサポートいたします。「自院の仕組みで法律が求める要件を網羅できているか不安」というご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
※本コラムは、一般的な情報提供を目的としたものです。法令や行政の指針は執筆時のものであり、改正されることがあります。また個別の事案によって適切な対応は異なります。
執筆者:社会保険労務士 浅賀 聖斗
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