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医師の「1か月単位の変形労働時間制」導入のメリットと、時間外計算・シフト作成の落とし穴
医療機関向けコラム
2026年7月21日
医師の働き方改革が本格化する中、長時間労働を防ぎつつ、その一方で、柔軟な働き方を実現するための仕組みづくりが多くの医療機関で急務となっています。その解決策の一つとして多くの病院で取り入れられているのが「1か月単位の変形労働時間制」です。
本コラムでは、1か月単位の変形労働時間制の基本と導入メリットをおさらいした上で、実務担当者が最も頭を悩ませる「時間外労働の計算」の問題及びその解決策と、シフト作成時に誤りやすい「勤務間インターバル」との関係について解説します。
医師の業務は、日勤だけでなく夜勤や半日勤務など、日や週によって労働時間が変動しやすいという特徴があります。1か月単位の変形労働時間制を導入すれば、業務の繁閑や当直のスケジュールに合わせて「ある日は10時間、別の日は6時間」といった柔軟なシフトを組むことが可能になります。これにより、月トータルでの総労働時間や時間外労働時間数を適正化しやすくなるのが最大のメリットです。
変形労働時間制を導入した場合、ある労働が「時間外労働(割増賃金の対象)」になるかどうかの判定は非常に複雑です。具体的には、以下の3段階を経て確認する必要があります。
1日ごとの判定:
あらかじめ8時間を超える時間を設定した日はその時間を超えた分、それ以外の日は8時間を超えた分
1週間ごとの判定:
あらかじめ40時間を超える時間を設定した週はその時間を超えた分、それ以外の週は40時間を超えた分(※1で時間外となった時間を除く)
月(対象期間)の総枠の判定:
対象期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した分(※1、2で時間外となった時間を除く)
このように極めて煩雑な計算が必要となりますが、一方でこれに対応している給与システムはあまり多くなく、現場の給与担当者が目視で確認しているケースも稀に見受けられます。
厳密に法律通りの計算を行うと、「法定内残業(割増なし)」と「法定外残業(1.25倍)」を日、週、月単位で切り分ける必要があり、勤怠管理システムの改修や人事担当者の手計算の負担が膨大になります。
そこで実務上は、「あらかじめシフトで定めた所定労働時間を超えて働いた分については、すべて時間外労働(125%の割増賃金)として支払う」というルールで運用している法人が多く見受けられます。
労働者にとって有利な計算方法であるため法律上も問題なく、計算ミスを防ぎ、実務負担を大幅に軽減することができます。また、変形労働時間制を適用していない労働者に対しても、1日8時間、週40時間を超えていなくても所定労働時間を超えたところから1.25倍で支払っているのであれば、従業員間の均衡の観点からもこのような取り扱いが妥当と考えられます。
医師の働き方改革において、1か月単位の変形労働時間制のシフト(事前の勤務予定)を組む際に注意しなければならないのが「勤務間インターバル」との関係です。
勤務間インターバルとは、あくまで「事前に予定された業務の開始から一定時間内に継続した休息時間を確保すること」を指します。したがって、1か月単位の変形労働時間制において各医師の労働時間を特定する(シフトを作成する)段階で、確実にインターバルが遵守できる勤務予定を組むことが大前提として求められます。
「代償休息」は、勤務間インターバル中にやむを得ない理由により対象医師を労働させ勤務間インターバルを確保できなかった場合に、事後的に付与される救済措置です。そのため、最初から勤務間インターバルが確保できない(=代償休息を付与することを前提とした)勤務シフト等を組むことは、原則として認められていません。
シフトを作成する際は、単に「月の総労働時間が基準内に収まっているか」だけでなく、「日々のインターバルが法定の基準を満たして設定されているか」を必ずセットで確認する運用を徹底しましょう。構築していきましょう。
医師の働き方改革は、変形労働時間制などの「制度導入」がゴールではありません。複雑な時間外計算や、インターバル規制をクリアするシフト作成など、導入後の「日々の適正な運用」こそが、多くの医療機関における最大の課題となっています。
弊法人では、医療現場の実情に精通した社会保険労務士が、病院向けの人事労務コンサルティングを提供しております。実務負担を抑えた制度設計から、勤怠システムの内容も踏まえた上でのアドバイス、適法なシフト管理の仕組みづくりまでトータルでサポートいたします。「自院の運用が正しいか不安」「現場の負担を減らしたい」とお悩みの医療機関様は、ぜひお気軽に弊法人までご相談ください。
※本コラムは、一般的な情報提供を目的としたものです。法令や行政の指針は執筆時のものであり、改正されることがあります。また個別の事案によって適切な対応は異なります。
執筆者:社会保険労務士 浅賀 聖斗
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